あなたの会社も損をしている!テンプレート就業規則の恐怖

就業規則は労働基準監督署に届けでなければいけません。その義務(常用労働者が常態で10人以上である事業場)を履行するためにテンプレート就業規則を届け出てしまう経営者様がいらっしゃいます。たしかにこれで労働基準法の届け出義務は果たされました。しかしそれでいいのでしょうか。

そこにかいてあることは御社(事業場)でのルールです。法規です。経営者様自身が「我が社の社員とこういう約束をしました。私はこれを守ります」と届け出たのです。何が書いてあるかわからないがとにかく何かしら用意して出す、そんなテンプレート就業規則の怖いところをほんの少しですが見ていきましょう。

CASE1:残業代の過払い

所定労働時間を超えて勤務に服した場合には1時間当たりの算定基礎額に25%増しの時間外勤務手当を支給する。特に問題はなさそうに思えるでしょう。

しかし「所定労働時間を超えて」の「所定」というところが問題です。皆様方の会社の所定労働時間は何時間ですか。仮に9時~17時(休憩1時間)でしたら7時間です。この就業規則の場合ですと17時以降は25%増しにしなければいけません。しかしながら労働基準法において25%増しにする義務は「法定」労働時間の8時間を超えたときなのです。

よって17-18時の間は所定時間外ですが、法定時間内ですので労働基準法上は25%増しにする必要はないのです。勿論会社の方針でそうしよう、と意志をもってこの様な就業規則にするのは一向に構いません。

しかしそうでないならば、法定時間内の残業と、法定時間外の残業に対する手当の額は就業規則で明確にすべきでしょう。所定労働時間が8時間の会社の就業規則を流用したりするとこういうことになるのです。これがテンプレート就業規則を使う怖いところです。

CASE2:休日出勤の過払い

同様のことが休日手当についても言えます。所定休日を超えて労働に服した場合には1時間当たりの算定基礎額に35%増しの休日手当を支給する。月―金曜日出勤、土日休みの会社の場合、土曜日に出勤して8時間労働したら1.35倍の賃金を支払うと言っているのです。

しかしちょっと待ってください。労働基準法での法定休日とは週に1日なのです。よって土曜日は御社の休日ですが法定休日ではありません。よって35%増しにする必要はないのです。(土曜日出勤することで週40時間を超えれば25%増しにする必要はあります)

しかし就業規則に書かれているのですから、それは社員との約束です。きっちりと払う義務があります。よって所定休日だが法定休日でない休日と、法定休日の手当の額を明確にしなければいけません。休日の設定の仕方は業種、会社、職種によって様々です。

では そもそもその1時間当たりの算定基礎額は就業規則でどのように定義しているでしょうか。本給/1ケ月の平均所定労働時間となっていないでしょうか。ご確認ください。これですと、各種手当もすべて含んでしまう解釈の余地が生じます。基本給と書くべきでしょう。

あるいは本給の範囲を明確に定義しておくべきでしょう。就業規則にはこう書いているが、実際は基本給で計算しているから問題ない、実害はないとおっしゃる経営者様。もし社員さんから指摘されたら、あるいは労働基準監督署から指摘されたら過去にさかのぼって支払う義務が生じます。

今まで問題が起きなかったのは誰も何も言わなかったからです。誰かに言われたとたんに瓦解するような薄氷の上で経営する必要はありません。テンプレート就業規則を見直せばいいだけなのですから。

CASE4:降給が出来ないケース

毎年4月に昇給するものとする。これまで読み進めた方はすぐピンと来たでしょう。非常に怖い約束をするものです。高度成長期の高利率のころに5%の予定利率で終身企業年金を約束するのと同じくらい怖い約束をしています。なんせ毎年毎年景気がどうであろうと、企業業績がどうであろうと、基本給を上げると約束しているのです。

きっと高度成長期の頃から就業規則を見直していない会社のものを流用したのでしょう。テンプレートでは時代にそぐわないケースが多々あります。他の個所でもとんでもない約束を知らず知らずのうちにしていることでしょう。

CASE5:退職金を不支給にできないケース

退職金規定を設けたり、退職金を支給するなんて書いている場合、当然ながら退職金は支給しないといけないのですが、その他にこんなケースもあります。

懲戒解雇された社員に退職金を支給しますか?退職金は長年の誠実な勤務に対する感謝・慰労金の意味合いが強いわけですから、支給したくないと言うのが経営者様の心情でしょう。その心情は就業規則に書いていますか。つまり、懲戒解雇の場合には退職金を支給しないと定めていますか。

いままで懲戒解雇となるような社員さんがいなかった会社の就業規則を流用するとこういうことになります。この会社ではこれで特に問題は無かったのでしょう。テンプレートのせいで何百万、何千万の影響が出た後に悔んでも後の祭りです。

CASE6:パート・アルバイトの権利

御社では就業規則は何冊ありますか。1冊ですか。では社員さんの勤務態様はどうですか。フルタイムの正社員さんだけでしたら1冊でもいいでしょう。しかし社によって呼び方は違うでしょうが、準社員、契約社員、パート社員、嘱託社員、アルバイト社員等と義務も権利も違うのであれば、それぞれに明確な規定をしなければいけません。

それぞれにきっちりしたものを作っておけば間違いはありませんし、社員さんにとってもわかりやすいです。社員さんの定義は各社によって違います。それを他社のものを流用して合致する筈が有りません。

あるいはほとんどの社員が正社員の時代と今は明らかに違います。テンプレートを使用したりすると、全ての社員さんに対して正社員と同じ権利を認めることになります。働きや役割に応じて変えていきたいと思っているのならば、テンプレートでは対応不可能でしょう。

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